レンズを覗き込むたびに憂鬱な気分になってしまうのは、あなたが写真と機材に対して真剣に向き合っている何よりの証拠です。しかし、その不安は光学的な事実と正しい知識を持つことで、今すぐ確信を持って解消し、撮影への情熱に変えることができます。
この記事を読むことで、あなたのレンズにある「そのゴミ」が画質に影響するのかを物理的に判断できるようになり、無駄な修理費を払うことなく、賢く機材と付き合っていくための明確な基準が手に入ります。
カメラレンズ内部のチリが写真の写りに与える影響について、感情論ではない物理的な真実をお伝えします。
数々の実証実験と光学理論に基づき、あなたのレンズ資産を守り、精神的な平穏を取り戻すための最適解を提示します。もうペンライトで粗探しをするのは終わりにして、ファインダーの向こう側にある景色を楽しむための新しい常識を手に入れましょう。
カメラレンズ内のチリが写真の写りに与える影響とは?光学理論が明かす意外な真実

多くのカメラ愛好家にとって、愛用するレンズの中に小さなチリやホコリを見つける瞬間ほど、心がざわつくことはありません。「このゴミが写真に写り込んでしまうのではないか」「画質が悪くなってしまうのではないか」という不安は、大切な機材を扱っていれば当然の感情でしょう。
しかし、結論から申し上げますと、レンズ内部の微細なチリが写真の写りに悪影響を与えることは、物理的にも光学的にもほとんどあり得ません。
なぜ、目に見えるゴミが写真には写らないのか。このセクションでは、その意外な真実を、光の振る舞いやレンズの構造といった科学的な視点から、わかりやすく紐解いていきます。
前玉の傷や微細なホコリが画質に影響しない物理的な理由
レンズの一番外側にあるガラス、いわゆる「前玉」に付着したチリや小さな傷は、驚くほど写真には影響しません。これは、私たちの直感とは大きく異なる事実ですが、レンズを通る光の性質を知れば納得できる現象です。
前玉は、風景全体からの光を最初に取り込む「入り口」の役割を果たしています。この入り口を通る光は、一点のゴミによって遮られるのではなく、そのゴミを回り込むようにしてレンズ全体を通過します。
つまり、前玉にあるゴミは、写真全体を構成する膨大な光の中のほんのわずかな一部分を遮るに過ぎないのです。
光束の断面積が大きく特定の影を作らない光学的特性
前玉の位置では、被写体から届く光の束(光束)が非常に広い面積を持っています。レンズの特定の画角において、前玉のあらゆる部分を通過した光が、最終的に写真の像を結ぶために使われます。もし前玉に小さなチリがあったとしても、それは広い光の束の中にある極めて小さな点に過ぎません。
この状況は、窓ガラスについた小さな汚れを通して外の景色を見ることに似ています。窓ガラスに近づいて外を見ても、汚れが邪魔をして景色が見えなくなることはありません。汚れの部分を通る光以外にも、周囲からたくさんの光が目に入ってくるため、景色は問題なく見えるのです。
カメラレンズの場合も同様で、前玉上のゴミが作る影は、周囲からの豊富な光によって打ち消され、センサーに届くころには完全に消えてしまいます。
したがって、前玉についた微細なチリや傷が、特定の部分に黒い点として写り込むことは、光学的な原理上、極めて起こりにくいと言えます。光の束が太い場所にある異物は、画像として結像する力を持ち得ないのです。
付箋紙を貼っても写らない実験結果が証明する頑健性
この事実を裏付けるために行われた、ある興味深い実験があります。アメリカの有名なレンズレンタル会社が行った検証では、レンズの前玉に約1センチ四方の「付箋紙」を貼り付けた状態で撮影を行いました。
1センチという大きさは、通常のチリやホコリとは比較にならないほど巨大な遮蔽物です。
実験の結果は驚くべきものでした。絞りを開放(F値を小さく)して撮影した場合、写真には付箋紙の影すら写りませんでした。付箋紙が貼られていることに気づくことさえ難しいほど、鮮明な写真が撮れたのです。
もちろん、極端に絞り込んだり、広角レンズを使ったりすればうっすらと影が見えることもありましたが、一般的な撮影条件では、これほど大きな異物であっても画質への致命的な影響はありませんでした。
さらに極端な例として、前玉が割れてヒビが入ったレンズでの撮影実験もあります。クモの巣状にヒビ割れたレンズであっても、逆光などの厳しい条件を除けば、被写体はしっかりと写りました。
これらの実験事実は、レンズの前玉がいかに傷や汚れに対して強いか、そして神経質になりすぎることがいかに無意味であるかを、私たちに教えてくれています。
結像の仕組みと錯乱円がゴミを消してしまうメカニズム
なぜレンズの中にあるゴミは写らないのでしょうか。その答えは、カメラが「どこにピントを合わせているか」という基本的な仕組みの中にあります。
カメラは、遠くの風景や近くの人物など、特定の距離にある被写体にピントを合わせるように設計されています。このとき、レンズ内部にあるゴミには、全くピントが合っていない状態になります。
焦点面と共役関係にないレンズ内異物の位置関係
カメラの専門用語で、ピントが合っている被写体の面と、画像が映し出されるセンサーの面は「共役(きょうやく)」という関係にあります。これは、被写体の一点から出た光が、レンズを通ってセンサー上の一点に集まるという特別な関係です。
しかし、レンズ内部のゴミは、この共役の関係にある位置には存在しません。被写体にピントを合わせているとき、レンズのガラス表面にあるゴミは、ピント面から光学的に非常に離れた場所にあります。これを「デフォーカス(ピントが外れている)位置」と呼びます。
ピントが大きく外れているということは、ゴミの一点から出た光(あるいはゴミによって遮られた光の影)は、センサー上の一点に集まることができません。一点に集まらずに、広い範囲にぼんやりと広がってしまうのです。
この「ピントが合わずに広がってしまった像」こそが、ゴミが写らない最大の理由です。
巨大な錯乱円として拡散しノイズとして認識不能になる原理
ピントが外れた点光源が、センサー上で円形のボケとして写ることを「錯乱円」と呼びます。レンズ内部のゴミの場合、この錯乱円が極めて巨大になります。ゴミの影がセンサー上で豆粒のような点になるのではなく、画面全体を覆うような巨大で薄いベールのように広がってしまうのです。
想像してみてください。濃い黒インクを一滴、プールの水に垂らしたとします。最初は黒い点に見えますが、プール全体に拡散してしまえば、水の色は透明なままで、インクの存在を目で確認することはできなくなります。これと同じことが光の世界でも起きています。
ゴミによる影の情報は、巨大な錯乱円として画面全体に極限まで薄く引き伸ばされます。その結果、周囲の明るい光の信号と混ざり合い、人間の目にも、デジタルデータ上でも、ノイズとしてすら認識できないレベルまでコントラストが低下します。
つまり、ゴミは消えたわけではなく、薄まりすぎて見えなくなっているのです。これが、光学理論が明かす「ゴミが消える」メカニズムの正体です。
カメラレンズのチリが画質に影響する唯一の条件と3つの注意点
ここまで、レンズ内のチリは基本的に写らないと解説してきましたが、例外が全くないわけではありません。特定の条件下では、目に見えないはずのチリが写真に亡霊のように現れることがあります。それは決して運が悪かったわけではなく、物理的な条件が整ってしまった結果です。
ここでは、どのような状況でチリが画質に悪影響を及ぼすのか、その「唯一の条件」と、撮影時に気をつけるべき3つの重要なポイントについて解説します。これを知っておけば、不要なトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
センサー直前の後玉に付着した汚れが及ぼすリスク
レンズの前側(被写体側)の汚れには寛容なカメラも、後ろ側(カメラ本体側)の汚れには非常に敏感です。特に、カメラボディとの接続部にある「後玉(リアエレメント)」に付着したゴミや傷は、画質に直結する最大のリスク要因となります。後玉が危険な物理的理由は主に2点あります。
センサーとの距離が近く影がくっきりと投影される
後玉はイメージセンサーのすぐ近くに位置しています。光源(ゴミ)と投影面(センサー)が近ければ近いほど、影はくっきりと濃く映し出されます。懐中電灯で壁に影絵を作るとき、手を壁に近づけるほど影がはっきりするのと同じ原理です。
光路が狭く小さなゴミでも遮蔽率が高くなる
レンズを通った光は、センサーに向かって収束していきます。後玉の位置では光の通り道が非常に狭くなっているため、小さなゴミであっても光路全体に対する遮蔽率が高くなります。つまり、細い水道管に小石が詰まるようなもので、流れを大きく阻害してしまうのです。
後玉についた指紋、ホコリ、あるいは交換時に付着した唾液などは、写真に黒いシミとして写り込む可能性が非常に高いです。
レンズ交換の際は、後玉を風上に向けない、できるだけ下を向けて交換するなど、後玉を死守する意識を持つことが、画質を守るための第一歩です。
極小絞りのF22で撮影した場合における写り込みの検証結果
レンズのチリを可視化してしまう魔法の(そして厄介な)設定、それが「絞り込み」です。特にF16やF22といった最小絞り付近まで絞り込んだ場合、普段は見えないレンズ内部のゴミが突如として姿を現すことがあります。絞り込むことでゴミが写る理由は、主に2つあります。
被写界深度が深くなりレンズ内のゴミにピントが合う現象
絞りを絞ると、ピントが合う範囲(被写界深度)が手前にも奥にも広がります。これにより、本来はピントが合っていないはずのレンズ内部のゴミに対しても、ある程度ピントが合うようになり、ボケていた影が実体を持って現れます。
光が平行に近づきゴミの影が拡散しない物理特性
絞り穴が小さくなると、光は細く真っ直ぐな線に近づきます。これにより、ゴミの影が拡散せずに、その形状を保ったままセンサーに届きやすくなります。
実際に、青空や白い壁など均一な背景に向けてF22で撮影すると、センサー上のゴミだけでなく、後玉付近にある大きめのチリも黒い点として写ることがあります。
しかし、これは逆に言えば「F22まで絞り込まなければ写らない」ということでもあります。一般的な撮影(F8程度まで)であれば、過度に心配する必要はありません。
強い光源がある逆光撮影時に発生するフレアやゴーストへの影響
「写り込み」とは少し異なりますが、レンズ内のチリが画質を低下させるもう一つのパターンが「逆光撮影」です。太陽や強いライトが画面内、あるいは画面のすぐ外にあるような状況では、レンズ内部に入った光が複雑に反射します。
このとき、レンズ内部に多数のチリやホコリがあると、それらが光を乱反射させる原因となります。通常であればコーティングによって抑制されるはずの光が、チリに当たって予期せぬ方向に散らばってしまうのです。これにより、以下のような現象が発生します。
特にオールドレンズや、チリの混入が著しい中古レンズを使う場合は、逆光時にハレ切り(手やレンズフードで有害光をカットすること)をするなど、光のコントロールに一層の注意が必要です。


除去すべき危険な異物と放置すべき安全なチリを見分ける5つの判断基準
レンズの中に何かあると気づいたとき、「すぐに修理に出すべきか、それとも無視して使い続けるべきか?」なんて迷うことはありませんか?
実は、レンズ内の異物には「放置しても良い安全なもの」と「放置すると取り返しのつかないことになる危険なもの」の2種類が存在します。
これらを正しく見分けることができれば、無駄な出費を抑えつつ、大切な機材の寿命を延ばすことができます。以下の判断基準テーブルと詳細解説を参考に、お手元のレンズの状態を確認してください。
| 異物の種類 | 見た目の特徴 | 危険度 | 推奨される対処 |
|---|---|---|---|
| チリ・ホコリ | 白い点、細い繊維状 | 安全(Lv.1) | 放置(撮影に影響なし) |
| カビ | 蜘蛛の巣状、白い斑点 | 危険(Lv.5) | 即除去・防湿庫へ隔離 |
| クモリ | 全体が白く濁る | 警告(Lv.3) | 専門業者による修理 |
| バルサム切れ | 虹色のギラつき、油膜 | 警告(Lv.3) | 修理困難(高額) |
| 油染み | 絞り羽根が黒光りする | 注意(Lv.2) | オーバーホール推奨 |
一般的なホコリや繊維状のチリは基本的に放置で問題ない理由
まず安心していただきたいのは、レンズ内で最もよく見かける「白い小さな点」や「細い繊維のようなもの」は、そのほとんどが単なるホコリやチリだということです。これらは製造過程でわずかに残ったものや、ズームレンズが伸縮する際に空気と一緒に吸い込んだ衣服の繊維などです。
ホコリやチリが、安全である理由は以下の通りです。
- 生物ではないため時間とともに増殖も成長もしない
- ガラスやコーティングを溶かしたり腐食させたりしない
- 通常の撮影でこれらが写り込むことはまずなく画質への影響しない
精神的には気になるかもしれませんが、機能的には無害です。これらを除去するためだけにレンズを分解するのは、手術のリスクを負ってまで「ほくろ」を取るようなもので、コストとリスクが見合いません。基本的には「見なかったこと」にして、撮影を楽しむのが正解です。
カビは放置厳禁!レンズの資産価値をゼロにする菌糸の恐怖
チリとは対照的に、絶対に見逃してはいけないのが「カビ」です。カビはレンズにとっての癌であり、発見次第すぐに対処しなければならない緊急事態です。カビは高温多湿な環境を好み、レンズ表面のコーティングやガラスそのものを栄養源として繁殖します。
初期の点カビと進行した蜘蛛の巣状カビの違い
カビには進行度に応じた特徴的な見た目があります。
カビかどうか迷ったら、「ルーペで拡大して見る」ことをお勧めします。不定形なチリとは違い、カビには植物的な規則性や繊維構造が見られるはずです。
カビがガラスコーティングを浸食する化学的メカニズム
カビが恐ろしいのは、単に光を遮るからではありません。カビは代謝活動の一環として、酸性の物質を排出します。この酸が、レンズ表面の極めて薄いコーティング層、さらにはガラス材そのものを化学的に腐食(エッチング)させてしまうのです。
一度ガラスが腐食されると、カビの菌そのものを除去しても、ガラス表面には「カビ跡」と呼ばれる凹凸が永久に残ります。これは磨いても消えず、光学性能を恒久的に損なう傷となります。
カビが発生した時点で、そのレンズの資産価値は大きく毀損され、最悪の場合は価値がゼロ(ジャンク品)になってしまうのです。
クモリやバルサム切れなど専門業者による修理が必要な深刻な症状
チリやカビ以外にも、レンズを白く濁らせる「クモリ(ヘイズ)」や、レンズの接着面が剥がれる「バルサム切れ」という症状があります。これらは経年劣化によって発生することが多く、オールドレンズによく見られる症状です。
これらは簡単な清掃では直らず、専門的な研磨や再接着といった高度な修理が必要になります。修理費用も高額になるため、症状の重さとレンズの価値を天秤にかけて判断する必要があります。
絞り羽根の油染みが引き起こす露出トラブルと動作不良
レンズを覗き込んだとき、中心にある絞り羽根が濡れたように黒光りしていることはありませんか?これは「油染み」と呼ばれる症状で、フォーカスリングなどに使われているグリスが溶け出し、絞りユニットに流れ込んだ状態です。
油染み自体は画質に直接影響しませんが、機械的なトラブルを引き起こします。油の粘り気によって絞り羽根の動きが重くなり、シャッターを切った瞬間に指定の絞り値まで閉じきらなくなるのです。
その結果、写真が露出オーバー(真っ白)になったり、連写時に露出が暴れたりします。放置すると絞りが完全に固着して動かなくなることもあるため、これも修理が必要なサインです。
ペンライト確認は不要?精神衛生を守るための正しい点検法
最後に、最も重要なアドバイスをお伝えします。それは「レンズに強いLEDライトを当てて、必死に粗探しをするのはやめましょう」ということです。
スマートフォンのライトや強力なペンライトでレンズを透過させれば、新品の高級レンズであっても、必ず無数のチリや拭きムラが見えてしまいます。これは「見えすぎてしまう」検査方法であり、実用上の性能とは無関係な微細な欠陥までを暴き出してしまうからです。
これを日常的に行うと、「またゴミが増えた」と精神的に疲弊し、写真を撮ることよりもレンズの検品に執着するようになってしまいます。
正しい点検法は以下の通りです。
レンズは美術品ではなく、写真を撮るための道具です。過剰な神経質さは捨てて、道具として使い倒すことこそが、賢明なフォトグラファーの態度と言えるでしょう。
レンズのホコリ除去にかかる料金相場と修理における経済的合理性の考え方
「どうしてもレンズのゴミが気になる」「カビが生えてしまった」という場合、プロに依頼して除去してもらうことになります。しかし、その費用は決して安くはありません。場合によっては、レンズを買い直した方が安上がりになることもあります。ここでは、具体的な料金相場と、修理すべきかどうかの経済的な判断基準について解説します。
主要メーカーや専門業者の清掃料金は1万円以上が目安となる現実
レンズ内部の清掃は、単に「拭くだけ」の作業ではありません。精密に組み立てられた光学機器を分解し、清掃後に再びミクロン単位の精度で組み直すという、高度な技術を要する作業です。そのため、基本料金だけでもそれなりの金額になります。
大手メーカー修理における技術料の相場
ソニー、キヤノン、ニコンといった大手カメラメーカーに修理を依頼する場合、レンズ内部のゴミ除去は基本的に「修理」扱いとなります。保証期間内であっても、ゴミの混入は「自然故障」ではなく「使用環境によるもの」とみなされ、有償修理になることが一般的です。
費用の目安は以下の通りです。
特に、防塵防滴仕様のレンズや、複雑なズームレンズの場合、分解の難易度が高いため技術料も高額になります。「ちょっとゴミを取るだけで数万円」というのは驚きかもしれませんが、それがメーカー品質を維持するための適正価格なのです。
簡易クリーニングと分解清掃の決定的な作業内容の違い
カメラ店や修理業者が提供しているサービスには、「センサークリーニング」や「レンズ外観清掃」といった数千円のメニューもあります。しかし、これらはあくまで「分解を伴わない清掃」です。
レンズの表面を拭いたり、ブロワー(ブロアー)で飛ばしたりするだけなので、レンズの「内部」に入り込んだゴミは絶対に取れません。
内部のゴミを取るためには、必ず「オーバーホール(分解清掃)」という重整備のコースになります。安価なクリーニングメニューで内部のゴミが取れると誤解しないよう注意が必要です。
中古市場価格と高額な修理費を比較して判断する損益分岐点
修理費が2万円かかるとわかったとき、その修理をする価値があるかどうかは、そのレンズの「資産価値」によって決まります。感情的な愛着はいったん脇に置き、電卓を叩いて冷静に判断しましょう。以下の表は、レンズのグレードによる修理判断の目安です。
| レンズカテゴリ | 価格帯目安(新品/中古) | 修理費用目安 | 経済的判断(推奨) |
|---|---|---|---|
| 実用・キットレンズ | 3〜5万円 / 1〜3万円 | 1.5〜3万円 | 買い替え推奨 修理費が資産価値を超えるため、そのまま使うか売却する。 |
| 高級・大三元レンズ | 20〜30万円〜 / 15万円〜 | 2〜3万円 | 修理・維持推奨 資産価値を守るため、コストをかけてでもメンテナンスする価値あり。 |
中古市場におけるゴミの評価基準と賢い売却戦略のポイント
「機材の入れ替えなどでレンズを手放す際、内部のチリは査定額にどれくらい響くのでしょうか。」カメラ専門店に売る場合と、メルカリなどで個人に売る場合とでは、求められる基準や注意点が大きく異なります。
ここでは一旦、少しでも高く、かつトラブルなく売却するためのポイントを押さえておきましょう。
買取査定ランクにおけるチリ混入の許容範囲と具体的な減額基準
マップカメラやカメラのキタムラといった大手中古カメラ店では、毎日膨大な数のレンズを査定しています。彼らの基準において、レンズ内の微細なチリは「あって当たり前」のものです。
| ランク | 状態名称 | チリ・ホコリの基準 | 査定への影響 |
|---|---|---|---|
| AA / A | 新品同様 / 美品 | 僅かなチリは許容 | 最高値(減額なし) |
| AB | 良品 | 少量のチリあり | 標準的な中古価格(減額なし) |
| B | 並品 | 目立つチリ・多数のホコリ | 相場よりやや安くなる(買取可) |
つまり、プロの査定員は「写りに影響しないチリ」を欠陥とは見なしません。神経質になって修理に出してから売るよりも、そのまま査定に出した方が、手元に残るお金(売却額-修理費)は多くなるケースがほとんどです。
個人間取引でトラブルを避けるための正直な商品説明テクニック
一方で、ヤフオク!やメルカリなどの個人間取引では注意が必要です。購入者はプロではないため、「チリ=悪」「ゴミ=画質低下」という先入観を持っている場合が多いからです。
トラブルを避けるためには、以下のテクニックが有効です。
ネット上の取引において、情報は隠すほど不信感を生み、開示するほど信頼に変わります。多くの出品者が隠したがる「チリの混入」をあえて自ら詳細に説明することは、バカ正直な損な役回りではありません。
それは、「ここまで厳密にチェックしている出品者なら、他の説明も嘘はないだろう」という強力な「信頼プレミアム」を付与する高度な販売戦略です。購入者が最も恐れているのは「届いてから騙されたと気づくこと」です。
その恐怖を先回りして取り除くことで、あなたは数多ある出品の中から「選ばれる出品者」となり、トラブルゼロで気持ちの良い取引を完了させる主導権を握ることができるのです。
【Q&A】カメラレンズのチリに関する質問:過度な不安を解消し撮影に集中するための5つの回答
- Q新品のレンズを買ったのにチリが入っていました。不良品として交換できますか?
- A
残念ながら、微細なチリの混入だけでは不良品として認められず、交換対象にならないケースがほとんどです。
レンズは製造工程において、無菌室のような環境で組み立てられますが、それでも微細な粒子の混入を100%防ぐことは物理的に不可能です。
メーカーの出荷基準でも、画質に影響しない程度のチリは「仕様」の範囲内であると理解し、気にせず使い始めることをお勧めします。
- Qズームレンズを使っていると、ゴミが増えるのは防げないのでしょうか?
- A
構造上、完全に防ぐことは非常に困難です。
ズームレンズは焦点距離を変えるために鏡筒が伸び縮みしますが、この動きはポンプのように空気を出し入れする役割も果たしてしまいます。体積が増えるときに外部の空気を吸い込むため、その中に含まれる微細なホコリも一緒に内部へ侵入してしまうのです。
防塵防滴仕様のレンズである程度軽減はできますが、それでも経年使用による混入は避けられません。「ズームレンズの宿命」と割り切る必要があります。
- Q自分でレンズを分解して内部のゴミを掃除してもいいですか?
- A
絶対にやめてください。
現代のレンズは非常に精密に調整されており、一度分解すると、専用の測定器なしには元の精度に戻すことができません。光軸がズレて片ボケの原因になったり、無限遠が出なくなったりするリスクがあります。
また、組み立て時に新たなホコリを混入させてしまうことも多いです。数万円のレンズを数千円の工具で壊してしまうよりも、ゴミを許容して使い続けるか、どうしても気になる場合はメーカーの修理窓口に依頼するのが賢明です。
- Q動画撮影の場合でも、レンズのチリは写り込みませんか?
- A
基本的には静止画と同様で、写り込むことは稀です。
動画撮影では、シャッタースピードを確保するためにNDフィルターを使用したり、開放側の絞りを使うことが多いため、F22まで絞り込むような状況自体が少ないからです。
ただし、パンニング(カメラを振る動作)をした際に、逆光でフレアが動くようなシーンでは、前玉の大きな汚れや傷が光の乱反射として一瞬見える可能性はあります。それでも、内部の微細なチリが映像の邪魔になることはまずありません。
- Qカビとホコリを簡単に見分ける方法はありますか?
- A
ルーペなどを使って拡大し、「形状」を確認するのが確実です。
ホコリは「不定形な塊」や「繊維」であることが多いのに対し、カビは「植物的な根」や「蜘蛛の巣」のような放射状のラインを持っています。
また、初期のカビは針先のような点に見えますが、ライトを当てて斜めから見ると、周囲に薄いモヤ(菌糸)が広がっているのが特徴です。形状に規則性や広がりを感じたら、ただのホコリではなくカビを疑い、早急に対処する必要があります。
【まとめ】カメラレンズのチリや影響の総括:神経質な確認をやめて撮影を楽しむための新常識

レンズの中にチリを見つけても、決して慌てる必要はありません。ここまで解説してきた通り、光学的な仕組みを理解すれば、それが写真に悪影響を及ぼす亡霊ではなく、単なる物理現象に過ぎないことがわかります。
最後に、本記事の要点を振り返り、あなたのフォトライフをより豊かにするための指針を確認しましょう。
光学理論と実験が証明する「ゴミは写らない」という事実
カメラレンズの構造上、内部に混入した微細なチリは、センサーの結像面(ピントが合う位置)とは光学的に共役の関係にありません。そのため、チリの影は一点に集まることなく、画面全体に広大な「錯乱円」として拡散されます。
この物理現象により、ゴミの影は周囲の光情報と混ざり合い、完全に打ち消されてしまいます。付箋紙を貼った前玉の実験でも証明されたように、レンズは異物に対して驚くほど頑健に設計されています。
私たちが肉眼で気にするレベルのホコリが、実際の写真に黒い点として写り込むことは、極端な条件下を除いてあり得ないのです。
記事の最重要ポイント:賢い管理と判断のための7つの鉄則
総括:道具への愛着を正しい方向へ向けるために
「レンズは資産」と言われますが、それは無傷で保存するための骨董品という意味ではありません。
美しい瞬間を切り取るための道具として、多少のチリを飲み込みながら現場で使い込まれてこそ、そのレンズは真の価値を発揮します。ペンライトでゴミを探す時間を、ファインダーを覗いて被写体を探す時間に変えてください。
その小さなチリは、あなたがこれまで多くの光と空気を捉えてきた、名誉ある勲章なのです。



